<困難を抱える人に、福祉施策でだけではなく雇用施策を>

 7月3日開催された北海道地域生活定着支援センター開設記念−地域生活定着支援事業研修会で聞いてきた講演の感想を書きます。
 この事業は、「刑務所などの矯正施設を出所した高齢者、障がい者の社会的復帰を支援する」ことを目的としたものです。
 講師の一人、山本譲司さんは元衆議院議員で、秘書給与詐取事件で懲役1年6カ月の判決を受け獄中生活を体験。その体験をもとに「障害のある受刑者の出所後のシェルター」作りなど、支援活動に携わっている。著書に「獄窓記」「累犯障害者」等がある。
 山本さんは、自らの体験やその後の支援活動などで感じていることを語った。
 「身元引受人がいない受刑者が多い。そのため仮釈放ではなく満期出所が多い」こと。「窃盗など幾つかの軽犯罪を繰り返し、逮捕→入所→満期出所→再び窃盗→逮捕→入所」を繰り返す人が多いこと。そういう人の多くが、知的障害や発達障害、精神障害であり、福祉のサービスを受けていない人であることに、大きなショックを感じたと語っていた。
 2008年に新たに刑務所に入所した人28,963人のうち、知的障害と判定された人は237人、人格障害161人、神経症387人、その他の精神障害1,214人。検査による判定でIQが49以下とされた人1,232人(4%)、50〜59が1,742人(6%)、60〜69が3,729人(13%)、70〜79が6,726人(23%)、80〜89が7,039人(24%)となっている。ボーダーの人も含めると、刑務所に入所している50%を超える人が何らかのハンディをも持っていることになる。知的障害で初めての入所は29%の人で、7割以上は複数入所経験者である。10回以上の入所経験者は10.7%もいる。(統計は、法務省「矯正統計年報」2009年版)
 また、刑務所に入る一人の入所者にかかる年間予算は1500万円だという。ILO(国際労働機関)は日本の懲役刑が「強制労働にあたるのではないか」と批判している。まして、その懲役で得る報酬は、2008年度で約月4,200円だという。
 福祉の貧困が、累犯障害者をつくり、「自立」の名による「孤立化」がすすんでいると、山本さんは訴える。そして、障害者を福祉施設に抱え込むのではなく、地域で暮らす場を、地域で働く場を作ることが最も重要なことだと語っていた。
 社会から排除され、矯正施設(刑務所等)で管理支配され、シャバに出てくると福祉に縛られていくんじゃ、何が「健康的で文化的な生活」なんだろうか?
 福祉を生業にするものとして、様々な困難を抱える人たちと共に働く「社会的事業所」の創出が一刻も早く求められていることを、強く感じた1日でした。